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その間に瀬織がクルマから降り、周囲を観る。
校長は建物の入口付近にクルマを止めて降りる。
敷地のフェンス外にいる瀬織との距離は70メートルほどで、ヒマワリの種のように軽い盗聴器を投げても、空気抵抗でとても届かない。
瀬織は、建物の中から見られてないかまでを含め、半径100メートルの状況を一秒で確認、すでに歩き出した校長の背中に向けて、手の平を向ける。
ここで霊服を出した。
羽衣風の霊服の肩周りの薄い帯が腕のように前に出て、種型盗聴器を載せ、するすると延びていく。
気で出来ている帯は考えにくいほど伸び、歩いている校長の背中に届く。
しかし背中には貼付けずに、背広のポケットに滑り込ませることに成功した。
何食わぬ顔で瀬織はクルマに戻る。
それを視界の端に捉えた刃平は不機嫌な警備員の前から去る。
瀬織の乗る軽自動車の方とは逆に向かう。
ビッコひきひき歩いて別の建物の角を曲がり、警備員の視界から見えなくなったそこで瀬織を待つ。
すぐに軽自動車が来た。
助手席に乗り込む。
瀬織は
「上出来。」
といいながらハンドバッグから携帯電話ほどのサイズの受信機を取り出し、操作した。
盗聴器の音声が聞こえてきたところでクルマを移動し、近場の牛丼チェーン店の駐車場に入ると停車した。
拾う音声は刃平の予想よりクリアだった。
ちょうど誰かと面会し始めたところらしく、挨拶をしている。
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