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刃平は、通りを歩いてくる一人の女性が目に入った。うつむき加減がまさに彼女だった。
「あ。あれ、百木先生じゃあないかな?」
瀬織も気付いた。
「そうみたいね。校長と待ち合わせか。落ち合う場所があの店なのね。多分。
よし、刃平も来て。」
瀬織はクルマを降りる。刃平も降り、早足で歩きだす。
二人は百木に近づいた。
百木が店のドアを開けようとした瞬間を狙って瀬織が声をかける。
「あら。百木先生!」
百木はビクッとして振り返り二人を見る。
バツの悪い表情を浮かべながらも
「ああ、あー山田さん、こんばんは。」
と挨拶した。瀬織はにこやかに店の看板を見上げる。
「この店でこれから一杯、やるんですね。」
「あ…えーまあそうなんです。」
「もしかして。デート?」
「いや、違います。」
「そう、それなら…
ここ入ってみたかったんですよ。いっしょに一杯やりましょう。」
「え!あの」
「大丈夫、子供にはミルクでも飲ませときゃいいんです。さあさあ」
瀬織は強引に百木の背中を押して中に入った。
刃平は呆れながらついていった。
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