5.エベ流文化の浸透計画

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中に入ると、カウンター席が6席、ボックス席が7つ、突き当たりの奥に個室が2部屋あり、入口の印象より広い。 瀬織は若い男性店員を捕まえ 「個室空いてない?」 と聞いてみる。 店員は 「左の部屋なら空いてますが…。」 そこで店員は百木のほうを見る。 「百木様でしたよね、先に谷井様は右の部屋でお待ちです。」 と馬鹿正直に教えてくれた。 瀬織は驚いたように百木の顔を見た。 「あらあら、百木先生~、ここじゃカオなんですねぇ。校長と待ち合わせですか。」 「あのまあ何か話しがあるとかで。」 瀬織は残念そうに 「そうでしたか。すみません。じゃあ私達は別の席で。それじゃ。」 と、頭を下げ、店員に 「左の個室にいれて。二人じゃダメかしら?未成年を連れてるからあまり人に見られたくないのよ。」 と頼む。 店員は 「大丈夫ですよ。」 と了承し、まず百木を右に案内し、瀬織達を左の部屋に案内した。 瀬織はすぐに 「生ビールとジンジャーエール。」 と注文した。 右に入った百木に谷井校長は 「おう、遅かったな。」 と声をかけるが、百木は人差し指を立て口に当て、話すな、のサインを送る。 校長の耳元で 「隣の部屋に山田さん姉弟がいます。入口で偶然会ってしまって…。」 と状況を話した。 校長は眉を険しくしたが、 「こっちに呼んでくれ。君に話したいことは後で話す。」 と百木に言う。 百木は左の部屋の瀬織達を呼びにいく。 しばらくすると瀬織がグラス片手に 「いやいやすみません、気を使って頂かなくてもいいのに…」 といいながらもズカズカ入り、ドッカと座った。 刃平も横に座る。 校長はニコニコして見せた。 「いや、百木にはたいした用事ではなかったので。いいんですよ。 恥ずかしながら、愚痴る相手がいないもので、たまに愚痴を聞いてもらうんです。」 百木は相変わらずうつむき、顔に表情がない。 刃平ですらその異常に気がつかざるを得ない。
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