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刃平は黒ぶちメガネに
「先生呼んできて。」
と言い捨て、コンピューター室のドアを開いた。
三つ編みが床にうつぶせに押さえ付けられていた。
細目三人が予想外の顔で刃平を見る。
刃平は頭をかいた。
「こういうときは、何て言うのがいいんだろ?
とりあえずまあ、
そのへんで勘弁してあげてはどうかな。と言ってみる僕だった。」
やはり一番大柄のが反応した。
「信じられねぇ。こんなキチガイがまだいたのか。
お前、俺らの邪魔するわけ?」
「したくてしてるわけじゃないわい。ふんとにもう。やけくそ。」
「何言ってんだお前!」
その細目が刃平の胸ぐらをつかむ。
刃平は瀬織が言っていたのを思い出す。
『ケンカで胸ぐらつかむ奴は素人。
つかんだ奴は二本しかない手がふさがってしまうけど、つかまれたほうは両手が自由。
殴るも関節技に入るも自由にできる。』
刃平は細目のあごを平手で下から突き上げた。
「げぶ」
細目の歯がガチッと音をたてた。さらにもう一度あごを突き上げる。
細目は刃平から手を離して前かがみになりながら後ずさる。刃平は
「慣れてないから加減がわからないよ。しょうがないか。」
と、つぶやいて、前かがみになっているためちょうど叩きやすい高さに下がっている細目の側頭部を、平手でフック気味に叩いた。
細目は横に倒れ、壁に激突した。
不意を突けば、特別に格闘に優れていなくともこの程度は可能だ。
残り二人が我に返り、
「てめごらぁあ!」
といいながら刃平に向かってくる。
刃平は、自分の力量では二人はとても相手にできないとわかっていたので、廊下に逃げる。
火災報知器が目に入り、ボタンを押した。
ベルが鳴り、機械のアナウンスが
「火事です。避難してください。火事です…」
と妙に冷静な声で繰り返す。
男性教師が三人、走ってきた。
(やれやれ)
と、刃平が気を抜いたとき、細目二人が突進してきてもみ合いになり、床に倒れる。
ちょうど駆け付けた教師が二人を引きはがしてくれた。
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