23人が本棚に入れています
本棚に追加
鐘の鳴る音が耳に入ってくる。
「ふぇっ!?」
憂羽は慌てて顔を上げた。辺りを見回すと、既に生徒が殆ど居ない。どうやら授業中、居眠りをしてしまったらしい。
「う、嘘、授業終わってるじゃん!」
慌てて郁人の姿を探す。が、どうやらもう教室内には居ないみたいだ。ふと、机に付箋紙が貼ってあるのに気がつく。
「ん…?」
付箋紙には『先に行ってるぞ。郁人』と至極綺麗な文字で書かれていた。
「こっ…こんなの書いてる余裕あったんなら起こせよ郁人の馬鹿!」
憂羽は付箋紙をぐしゃぐしゃにしてその辺に捨て、教室を飛び出した。
「えーと、次の授業は…あ!た、体育!?だっけ!?」
走りながら独りごちる憂羽に、周りの生徒が怪訝な表情を向けている。そんな視線にも気づかずに無我夢中で走っていると、廊下の角から突然現れた生徒に勢い良くぶつかった。
「きゃっ!」
「わっ!」
お互い、その場に尻餅をつく。腰をさすりながら顔を上げ、憂羽は目を丸くした。
「いったぁい…」
目の前で腰を押さえてそう漏らした生徒は、とても美人な女子生徒だった。長い茶髪の髪にパーマをかけ、大きな二重の目に、高めの鼻。誰がどう見ても“美人”の一言に尽きない。
「ごっ…ごめんなさい!!大丈夫ですか!?」
憂羽は慌てて立ち上がり、座り込んでいる女子生徒に手を差し伸べた。
女子生徒は顔を上げると、にっこり笑ってその手を掴んだ。
「良いの良いの。あたしも少しぼーっとしてたから」
手を引いて立ち上がった女子生徒から、ふわりと香ってくる香水の匂い。憂羽はうっとりとして頬を染め、自分より背の高いその女子生徒を見上げた。
.
最初のコメントを投稿しよう!