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「やっべえ!遅刻だ!!」
自転車をかっ飛ばす少年。昨日の夜遊びがたたり、目覚まし時計は効果ナシの朝だった。
交差点を猛スピードでカーブ。タイヤが擦れる音が響く見事なドリフトを駆使し、少年は急ぐ。
「近道じゃおらあぁぁ!!」
狭い路地をすり抜け、大通りに出る。人ごみがごった返しているせいで、自慢のスピードが生かされない。
イライラしながら人を避けて進んでいく少年。赤信号でブレーキをかけた。
「くっそ、あと2分しかねぇ!」
「よう紘希(コウキ)!また遅刻か!どうせ深夜アニメでも見てたずら!」
同じく信号待ちをしていた高校生。坊主頭を放置してツンツンになった髪の持ち主は、変な方言混じりで自転車の少年の肩を叩いた。
「おはよう五郎。だけどかまってる時間はないね!ていうかお前も遅刻の危機じゃねえか」
「この混雑の時間帯じゃ、チャリより走ったほうが速いの!おまん、頭わりぃボコだなぁ!」
「その方言ムカツクな・・。何言ってるかわからんが」
二人が言い合っているうちに、青信号に変わる。信号待ちの人が一斉に流れ出す。
「ほんじゃ、おっさき~!」
ススス、と人の間を縫って走っていく少年。名前は鳴滝五郎(ナルタキゴロウ)。
その後を追うママチャリ少年。名前は工藤紘希(クドウコウキ)。
不真面目な高校生の日常的な光景だが、サングラスの男がママチャリ少年を追いかけていることを、先を急ぐ通行人たちは気にも留めなかった。
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