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いざ稽古がはじまると失態の連続で、ボロボロだったのだが、いのうえ美紀が手取り足取り教えてくれた。
そのうち呼び出されてマンツーマンでやる事になった。
腕の広げ方など、後ろからぐっと引っ張られて、彼女の小さい口からの吐息がフと首筋にかかったりして、そんな日は眠れなかった。
彼女はある日二人で会おうと言ってきた。
「あなたといい舞台を作るには親しくならなきゃね。一回くらいデートしてみなきゃ」と言ってきたからで、もちろんOKした。
横浜の公園で落ち合った。
彼女は思いの外地味な服装をしていたが、彼女の輝きに変わりは無かった。
それから近隣をぶらぶら歩き、適当に食事をした。
彼女は終始演劇論を口にして、楽しそうだった。
なんで彼女はこんな容姿と、演技力、人のよさがあるのにもっと有名な監督の映画やドラマや大きな舞台に立てないんだろうと思っていた。少ないお客にも人気で、花束だって届く。
でもそのおかげで、彼女は今目の前にいる。
少なくとも今はよかった。
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