愛しきみえ

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再び公園に帰ってきて、林道を歩くと海の見渡せる広場に突き当たった。ガス灯を模した明かりはまだ点ってないが、夕暮れの日が美しかった。ブランコがあって影を長く伸ばしていた。 彼女は駆け足で手すりによりかかり、海に目を輝かせた。 振り向くと、バックから台本を取り出した。目を丸くする俺に「単なるデートだと思った?ちょうどブランコもあるし」と言って台本をめくる。 その物語は単なる恋物語なのだが、その中にはお互いの片想いを含めた恋愛歴を夕暮れの公園のブランコの前で叫び合うというシーンだった。もしかしてこれがしたくてここまでやって来たのだろうか。俺は聞けなかった。 時々来る人たちの目にはばかりながらも稽古は続いた。例のブランコのシーンを何度もやったが、どうもしっくり来ないらしい。 「なんか薄いのよね、恋愛歴なんてどううちに秘めてるかなんて人それぞれだから。アタシもたいした恋してきたわけじゃないけど」とつぶやいて、「よし」と台本を音をたてて閉じた。 台本を書く立場でもある彼女は悩んだ挙げ句に「ここはアドリブにしようよ。本当の恋愛歴をお互い語りまくるの。リアルでいいでしょ」と言った。戸惑わないわけがなかった。
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