愛しきみえ

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「私はね、あんたと違っていい男と付き合ってきたのよ。初恋は小二の時の春田くん。チビでひ弱だったけど優しかった。けど三年のはじめに引っ越しちゃった。次は五年の時の教育実習の渡先生。短い時間だったけど本気で好きで、折り紙の裏に書いてもらった短い手紙を今も持っているわ。中二の時に青山くんと初キスした。高二で常磐くんと初体験。散々な目にあわされたけどね。杉井くんに押し倒されたけど逆にのしてやった。その後は仮屋くんと会田くんと二股。すぐどちらも別れた。二人とも二股してた。卒業して演劇やりはじめて、堀場って人と一年付き合って振られた。別に泣きもしなかった。そしてそのまま誰とも恋をしないまま、誰からの愛も受け入れないままずっとずっとそのままで来たわ。それでもたまに片想いはして消えしては消え…今また片想いしてるわ」 と、一気に捲し立てた。最後の瞬間、目が役やいのうえ美紀ではなく井東紀美枝に戻った気がしたけど、俺は続けた。しかし、言葉がうまく出てこない。でも役に言わせた。代わりに言わせるように言った。
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