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淹れたてのコーヒーを持って、上司である矢代警部補の席に向かうと、矢代は書類に目を通しながらぼそりと呟いた。
「また痴漢か……」
「ええ、またですか? 最近多いっすね~」
応えたのは先輩の日野である。昨夜ラーメン屋(定食屋?)に連れて行ってくれた五つばかり年上の男で、階級は巡査長だ。
「そうだな。佐藤、お前これやっとけ」
「あ、は、はい」
そんな言葉と共に唐突に書類を突きつけられて、真夏はコーヒーと交換する形で書類を受け取った。
「日野、佐藤の面倒見てやれよ」
「了解です」
日野の方に会釈をしながら、真夏はデスクに戻ると早速書類に目を通した。矢代が言ったとおり痴漢の案件で、場所は自分が乗ってきた地下鉄の沿線、自分が下りたふたつ手前の駅になる。
「近いな。とりあえず行って、防犯カメラでも確認してみっか」
「はい」
後ろから覗きこんできた日野に声を掛けられ、真夏は席を立った。
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