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魔法使いの課外授業。
夏には深緑豊かだった葉は、秋も終わりになると気温低下に伴う霜により地に落ち土壌の栄養素へと変わる。奥へ潜り込み再生の地を目指す。
春になれば小さなこの命は満開の桜となり魔法使いらを宴会へと導き再び緑の一葉となるだろう。
―――しかし今はまだ9月の初め。暦上は秋。長たらしい休暇のあと。
「先生、魔法ってなんですか」
白亜は席を立ち訊いた。
「魔法使い以外だって日常的使ってるだろう?怒り悲しみ喜び嫉妬…感情や電化製品も」
先生は黒髪をかきあげ満足げに答えた。
「それは人間の内側から起こることであって魔法では無い。よく知られていることでしょう?電化製品だって電気を使い動かしているわ」
―――わかって無いねぇと頭を振る。
「感情は魔法」
螺旋階段を降りる。昼放課。美しい庭で生徒達は遊ぶ。白亜は参加しない見てるだけ。
魔法が使えないことがわかったのは生まれたその瞬間からだ。この世界では稀な症例で、それは白亜一人だけだった。
庭の木陰で涼んでいると先生が来た。青いとんがりに薄手のローブ。左手には黄色の太い指輪。
「さっきのこと、わかった?」
太陽を仰いでいる。
「全然」
白亜は耳を掻いた。
「放課後私の教室に来なさい」
それだけ言うと先生は職員室へ消えて言った。
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