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どの位そうしていただろう。 美咲の温もりが腕の中にあること、同じ気持ちでいてくれたこと。 そして何より、自分の気持ちを伝え受け入れてくれた事が、心の真ん中を暖かくする。 いつまでもこのままで居たいが、そうも言っていられない。 大分、落ち着きを取り戻した美咲に声を掛ける。 『美咲。』 視線を上げた美咲の顔を見て、ついつい吹き出してしまう。 涙で濡れた頬には黒い筋が付いていて、目の回りは真っ黒だ。 キョトンとしている美咲に、笑いを堪えながら口を開く。 『ひでー顔。ついでに風呂入ってこれば?』 ハッとした様子で浴室へと向かう、後ろ姿を見送る。 俺も支度でもするか。 美咲の涙でグチャグチャになっていた服。 それを脱ぎ捨て新しい物に袖を通す。 そう言えば、美咲の着替えが無かったな。 俺のシャツとハーフパンツを脱衣所に用意した。 リビングに戻ると、携帯が着信を知らせる光を放っていた。 確認すると隼人からのメール。 『明日、美咲ちゃんと店に来て。』 隼人にはきちんと報告をしようと思っていた。 美咲と一緒ということは、そんな必要も無かった事を意味している。 『了解。色々、悪かったな。』 そう返すと、直ぐに返信が届き『20時集合で。』と、簡単な内容に笑みを零す。 アイツらしい。 そのまま携帯をポケットにしまい、車の鍵を持つと美咲が顔を覗かせる。 先程、用意した物を着て。 半袖から覗く細い手首に、キラッと光るブレスレット。 ずっと付けていてくれたのか。 紛れもなく俺がプレゼントした物だ。 抱き締めたい衝動に駆られていると、化粧を落とした幼さを感じる顔が寂しそうに、こちらを見ていた。
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