その一

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       (一)  「――違うよ、誤解だよ。見たかったわけじゃないんだ。本当だよ、信じてくれよ……」 「じゃ、何でこんな物がここにあるのよ。あなたが借りてきたんでしょ。見たかったんでしょ。白状しなさいよ!」  景子は立ち上がると、語気を強めて怒鳴りつけた。 「出来心だよ。俺、こんなもの借りるつもりじゃなかったんだ。何か面白い映画でもないかと思って寄ってみたんだけど、つい……」 「だから見たかったんじゃないの。どうせ私じゃ物足りないわよね」 「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。すぐ返してくるから」
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