その一

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 信二は蛇に睨まれたカエルのように、タジタジとしている。 「いいわよ。今から見ればいいじゃないの、それ。私は必要ないみたいね。それを見るんだったら私は邪魔でしょ。帰るわ。じゃあね」 「おい待てよ、景子……」  立ち上がろうとした信二の頭上に、たっぷりと嫌味が含まれた励ましの言葉がかけられた。 「ガンバってね。――フン!」  景子は荒っぽく上着をつかむと、ドスドスと音を立てて部屋のドアまで行った。  勢いよくドアを開け、後ろを振り返る。そして鋭い目でキッと睨みつけると、全身の力を込めて、叩きつけるようにドアを閉めた。一瞬部屋全体が軋むほどの勢いだ。
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