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信二は蛇に睨まれたカエルのように、タジタジとしている。
「いいわよ。今から見ればいいじゃないの、それ。私は必要ないみたいね。それを見るんだったら私は邪魔でしょ。帰るわ。じゃあね」
「おい待てよ、景子……」
立ち上がろうとした信二の頭上に、たっぷりと嫌味が含まれた励ましの言葉がかけられた。
「ガンバってね。――フン!」
景子は荒っぽく上着をつかむと、ドスドスと音を立てて部屋のドアまで行った。
勢いよくドアを開け、後ろを振り返る。そして鋭い目でキッと睨みつけると、全身の力を込めて、叩きつけるようにドアを閉めた。一瞬部屋全体が軋むほどの勢いだ。
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