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彼女のバディから彼女の手へ目のやり場を変えると、彼女が取り出した物は俺が左手首に付けている物と同じだった。
「すまない、取り出しに手間取った、大事な物なので普段は奥に入れているのだ。さて、では始めよう」
そう言って寸秒、彼女は両手を交差させ胸まで上げた。
左手には例の機械、そして右手にはいつの間に取り出したか、自分の学生証を持っていた。
同時に、無人の周囲が緊張感を増した。
万物全てが彼女の一挙手一投足に固唾を飲んで見守っている様だ。
かく言う俺も、完成されていて、洗練されていて、そして美しい彼女の動きの観客のひとりとなっている。
彼女の眼光もまた、鋭さを増し、ぎらつく。
すると彼女はやおら口を開く。
「我、学園の徒、風を統べる者と証明し、此処に顕現させるは粛正の番人!!」
彼女はその口上が言い切るのと同時に交差させていた両手を滑らせる。
いつもなら辟易としているヘンテコ言葉も、彼女が言うとどうしてか一蹴する気にはなれなかった。
必然、彼女の正中で機械と学生証が触れ合う。
すると今までの沈黙が嘘の様に、機械のディスプレイが光りだし、電子音が鳴った。
[YOU ARE ADMITTED!!]
機械は確かにそう言った後、ディスプレイにランダムな数字を代わる代わる表示した。
何かを算出しているのだろうか?
俺がそんな事を観察していると、
「どうした、お前しないのか?それとも、往生際は弁えているクチか?」
相変わらず鋭い眼付きと物言いだ。
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