≪壱≫

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「いいかい、此処が琴音の新しい家だ。」 古びた建物の門を前に、一人の男が共にいる少女に言う。 男と手を繋いでいる少女はまだ幼く、きょとんとした顔をする。 「琴音の家は此処じゃないよ?父上と母上は?」 その言葉に、男は顔を曇らせる。 「…琴音のご両親は死んだんだよ。もういないんだ。」 「?」 琴音と呼ばれる少女の親は、何者かによって殺された。 もともと力のある武家の家で、それが狙われた理由だろう。 まだ幼い少女には、自分の両親は死んで、もういないという事を理解できていないようだった。 もうすぐ四才になる子供が、一人で生きていける訳がない。 その為、この『試衛館道場』に預けられるのだ。
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