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2020年 7月11日 深夜 ロンドン  「霧島さん、霧島さん」 細目の男が話しかけてくる。 この男の名は土谷将吾。 指名手配中の殺人鬼だ。 「すまない、考え事をしていてね」 「それより、これ…本当に人間がやったんですか?」 僕達がビルの屋上から見下ろす先、そこには一面氷漬けになってしまったロンドンがある。 そこにサイレンを鳴らし、救急車やパトカーが走り回っている。 「これが神の力を扱える魔本…"ALICE"の力だ」 「ほう…」 男は笑みを浮かべている。 新しいおもちゃを与えられた様な、そんな顔だ。 「ここにいると"彼ら"が来てしまう。そろそろ帰ろうか」 「次は、どこに向かうんですか?」 「そうだね」 スっと後方に指を向ける。 ズシリと、重い音と共に空間が歪んだ。 そこにいた人間の一部を除いて、空間ごと存在が消滅した。 「追っ手がきたみたいだね」 「おっと、もう気づかれてしまいましたか。しかし、今後ろにいた人間は死んだんですか?」 床に落ちている、人間だった物の腕を持ち上げ男は問う。 「さぁね、僕にもわからない」 そうして僕たちはその場を離れた。
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