21人が本棚に入れています
本棚に追加
◇ ◇ ◇
「なあ。どうする、少年」
キシキシの少年の髪を櫛でときながら、私は聞いた。
少年は、答えない。
無言のまま、少年はカタログとにらめっこしている。
その目は、いつになく真剣だ。
普段ならこうやって髪をとかれることを嫌がり逃げてしまうが、三億コルドという値段を口に出すと大人しくなった。
曰く、「街どころじゃないよ。小さい国が買えるってその金額」とのことらしい。私には食費以外のお金には無頓着だからよくわからない。
「なー少年。便座ごときに悩みすぎだと思うよー。べつに便利道具借りなきゃそこまで高くないって言ったろう?」
どうせが全部単なる椅子型の白い穴空き陶器である。まあ、掃除しやすいことに越したことはないけど、そこまで大した違いがないと思うんだよなー。
「あのね、高くないって正気で言ってるの?僕、別に異世界のものまでお願いしてないよ」
「いやいや。どうせ買うなら勝手に掃除もしてくれる便利設計の方が良いだろう?それに、異世界のモノは壊れにくい事でも有名だし」
それに高いと言っても、半年ほど食事を抜けば余裕の値段だ。
一度試した断食の疑問を解消するには悪くない。断食で私は死ぬかどうか。まあ少年もいることだし、倒れてもそのまま死ぬことは無いだろうから、弱るか否かの実験になるだろうけど。
最初のコメントを投稿しよう!