永久散髪

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  「…………」  むくり、と少年は立ち上がる。  ごそごそと彼は自分の私物を入れた旅行鞄をまさぐる。  そこからキラキラ光る小物の数々を取り出して、彼はワタシに手渡した。 「これ使って。国から逃げる時に、お金になりそうなものは持ち出せるだけ持ち出したんだ」  受け取ってみれば、なにやら七色に光る石の数々。  本でしか見たことが無い。ダイヤ、トパーズ、サファイヤなどなど。この先、間違っても森では見ることがあるはずもないだろう貴金属の数々が、私の手の上にのっていた。 「……マジで?」 「うん。もともと、それを売ってどこかで家を建てるつもりだったから……」 「うへ―……」  感嘆の声が、自然と口から洩れる。  改めて、少年のかつての立場について思いをはせた。  亡国の王族。追われる前のその立場は、さぞ色とりどりに輝くものだっただろう。 「…………」  ジッと、手の上に広がる色とりどりのそれらを見る。  おそらく、値段は知らないけれど少年の言う「家を建てるつもり」のお金は、私の言った便所の値段をはるかに上回るだろう。  
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