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「っぅ――――」
急にやってくる、震え。
私は自分の身体を抱きしめる。
寒い。
とにかく、寒い。
吐いた息は白く霞み、私の視界に霜を降らせる。
マヒした視界そのままで、私は周囲を見渡した。
部屋は、暗い。
そもそも日の光の刺さないこの場所は、私の感覚をまともにしない。
誰もいない。声も聞こえない。
だとすれば、今は夜ということだろうか。
陽が出ているうちは誰もがここにきて、私を罵倒し汚していく。
何とも情けない。
今や私の昼夜の判断は、その程度にしかできなくなっていた。
「…………」
震えが止まらない。
身に纏うはボロ切れ同然の薄い衣服。
毛布などはあるはずもなく、寒さを凌ぐ術はない。
丸くなって寒さに耐える。
空気が痛い。肌がビリビリ響いてしまって眠気はどこかに消えていく。
寒くて眠くなるのは人間だけだ。
かつていた隣人もそうしてどこかに逝ってしまった。
私は魔女ゆえに。
いっそ死んで楽になる甘えにも縋れぬまま、針のむしろに座る気持ちで、私は朝まで耐えるより他はない。
「早く……帰りたいな」
頭に浮かぶは暖かい部屋と食べ物たち。
良くいぶしたベーコン。
コトコト野菜と一緒にコンソメスープで煮込んで煮込んで。
いっそ今の空腹なら、鍋ごと飲むのも無理ではきっとないだろう。
考えるだけで、さらにお腹が空いてくる。
空っぽの胃は悲鳴を上げ、鋭い痛みが私に突き刺さる。
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