第6章~西国に覇を唱えし者共~

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その混乱する将兵を掻き分けて、老将の福原貞俊、天野隆重、阿曽沼広秀らが、隆景の前に姿を現す。 そして貞俊が、毅然とした態度で3人を代表して、隆景へと具申する。 『この混乱。恐怖に我を忘れた者共に何を申しても聞く耳を持ち合わせていないでしょう。隆景殿。今や貴殿をおいて他に毛利家を支える者は存在しない。ここは某たちが恐れを知らぬ強者を従え殿軍を率います。それ故に隆景殿は急ぎ戦場より撤退なさりませ』 そう貞俊は隆景へと進言した。 貞俊はこれまで、山陽・瀬戸内方面の軍事司令官である隆景を補佐して来た人物である、隆景に取って父元就に次ぐ存在でもあった、そんな貞俊の覚悟を決めた進言に隆景は、貞俊にかける言葉を必死に探し、やっとの思いで、声を絞り出す様に口を開く。 『貞俊…。申し訳ない…。儂がもっと早く龍神の化身の存在に気付いておれば…』 そう隆景は言い更に続ける。 『貞俊殿…。それに隆重殿。広秀殿。すまぬが後を頼む…。だが無理だけはするな。生きて戻れ』 そう隆景は貞俊たちに言葉を残し、宿老の梨羽宣平と椋梨弘平に守られ、戦場より撤退していった。
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