1人が本棚に入れています
本棚に追加
「私も……」
「ん?」
彼女は膝元にあるマグカップの縁をしばらく見ていたが、やがて顔を上げ、真っ直ぐ目を合わせて言った
「私も、冒険に連れていってほしいです!」
ふーん……
俺はココアを少し口に含んだ
彼女はそれを見て、俺に失礼だと思われたと感じたのか、また俯いてしまう
大きな声を出したからか、恥ずかしそうにモジモジしている
しかし、俺の隣の椅子を退こうとはしなかった
こんなに真剣に教えを請う人は珍しいだろうな
彼女の台詞を言い切った時の眼は、実に力強かった
「分かった」
「本当ですか!?」
さっきまでのモジモジとは一転、まるで輝いてみえるほど嬉しそうにはしゃいでいる
そこまで喜ばれると、悪い気はしないな
こっちまでつられて表情が綻ぶ
「ああ、ちょっと散歩程度にな」
「やった!!よろしくお願いします、先生!」
「クロさんで構わない。だいたいの生徒からはそう呼ばれる」
「んーと、じゃあクロ先生!」
どうやら緊張が解れてきたらしい
彼女は一気に元気になってはしゃいでいる
「ああ、それでいい。君の名前は?」
「遥香って言います。ハルって呼んでください」
「分かった。じゃあ始めようか」
最初のコメントを投稿しよう!