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「705ですね!」
「正解だ」
俺は頷いて答えた
しかし、正解したにもかかわらず、ハルはあまりうれしくなさそうに見える
「どうした?」
「あのですね、クロ先生。これくらい流石に私でも出来ますよ。クロ先生の意図がつかめません」
ハルは、腑に落ちないといった表情で筆算の式たちを眺めている
些か、からかわれて不機嫌になっているようにも見える
「確かに君の答えはあっている。しかし、賢く計算されてはいないだろう」
「賢く……ですか」
「あぁ、例えば31415から連続する十個の自然数を全部足す時はどうする?」
ハルはうーんと唸って、また筆算を始めようとする
「314195だ」
「ふぇっ?」
頓狂な声を出したハルに、机の引き出しから電卓を取り出して渡す
ハルはしばらく混乱していたが、やがてそれを受け取り、ひたすら足し算をはじめる
そして一際強くイコールのボタンを叩くと、その画面を見て目を見開く
「本当だ……。314195です……」
「連続する自然数を十個足す問題っていうのはコツがあるんだ。三秒で解けるくらい簡単なものだ」
ハルは狐につままれたような表情で電卓とにらめっこしている
それから自分の筆算や答え、数字、色んな物を見つめて、興奮したようにつぶやいた
「不思議です……」
「ではその”不思議”を解決して見せようか」
俺は自分の紙に向かい合って話を始めた
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