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「不思議か?」
「はい………私、数学ってもっと難しくて、とっつきにくくて、何というか、遠いものだと思っていました」
「なるほど」
「でも、先生はとても楽しそうに数学しているみたいで、不思議です」
彼女は一生懸命気持ちを言葉で表したようだった
なかなか素直にものを言う人だな
余程不思議なのが伝わった
俺はココアのおかわりを注ぎに台所へ向かう
「ゲームは好きか?」
「えっ、まぁ、はい」
「一緒なんだ、数学も」
マグカップに注がれた牛乳から湯気がたつのを見て、それをスプーンで掻き混ぜながら俺は言う
「色んな問題を解いてレベルを上げ、公式や定理という武器を手に入れ、実戦でそいつらを磨き上げる。そして巨大な問題が表れたら、がむしゃらに武器を使って突っ込んでみるんだ。もしかしたら迷宮に迷い込むかもしれない。行き止まるかもしれない。しかし、そこで足掻いて思わぬ宝物に出くわした時の感動は大きい。そうしてまた武器を手に入れて、更に高みに進む」
ココアを持って、机に戻る
彼女はさっきから立ち位置を変えずに、懸命に話を聞いている
俺はベッドの頭の近くに立て掛けられた折り畳み椅子を持ってきて、自分の椅子の隣に置いた
彼女はココアを受け取った時のように、遠慮がちに座る
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