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「青木翔。七組だよ」
「うん、やっぱ初めて聞く名前やな。編入組?」
「う、うん。見覚えとか、ないかな?廊下の掲示板とかで」
それというのも、僕は入学以来定期テストでは常に学年二位の成績をとり続けていてね。
ちなみに、一位が玲さん。
当時の僕は、優等生として生きることに必死な子でね。
同学年で唯一僕よりも優等生(成績の上では)な相手として、玲さんを意識していたのだよ。
この学校じゃあテストの成績優秀者は廊下の掲示板に貼りだされるだろう?
てっきり、玲さんも僕のことを少なからず意識しているのだろうと自意識過剰になっていたのさ。
それが、この玲さんときたら……
「あ、えーと……あーあー、知っとる知っとる。確か、図書室通信書いてる人やっけ?」
図書委員が月に一度発行する、図書室の新入荷とオススメ書籍を紹介する壁新聞みたいなやつのことだね。
うん、もちろん僕はそんなものの制作に携わったことなんて一度もないよ。
「定期テスト、いつも一位だよね、姫崎さん。いつも二位だけれど、次こそは僕が一位を奪ってみせるからね」
潔く、爽やかに、まるで気の良い優等生のように、僕は改めて右手を差し出し握手を求めた。
本当は彼女に負けていることなんてどうでもよかったのだけれど、優等生である以上、上の順位を目指さなければならない。
その姿勢を周囲にアピールすることが、僕は半ば癖のようになっていた。
今から思えば、おぞましい悪癖だね。
「ふーん……君、学年一位になりたいん?」
玲さんは僕の差し出した手には見向きもせず、そう呟いた。
流石だよね。僕の上っ面の優等生は、玲さんには一目で見透かされていたんだ。
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