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鼻水マン
とあるファミレスで誕生したスライム人間。その体は単純にスライムのようなゼリー状ではなく、鼻水のようなネバネバした液体である。
「ヴェチャアヴァアアアア」
鳴き声と思われる音を発声したあと、次々と周りの人間に襲い掛かる。
「く、来るんじゃない!ぐわああああああ!!」
逃げ遅れた老人が第一の犠牲者となった。
襲われた老人はスライム人間と姿を変えた。
まるでゾンビのように数を増やすスライム人間。
1時間経つ頃には、約100体に増えていた。
「この街から避難してください。あと1時間後に街中を焼き払います。」
街中に響くアナウンス。
私の街が、と嘆くもの。
とにかく必死で逃げるもの。
少しニヤついた表情の不動産屋。
いろんな人がいる。
しかし、地球上の人間全てが鼻水になってしまうかもしれない。
国のやり方は、少し強引だが、誰も否定することはできない。背に腹は変えられないのだ。
そして、街は焼き払われた。
避難した人たちは、国によって用意された施設に暮らすことになった。
しかし、とても街中の人々をカバーすることはできず、住む場所がないものたちがいた。
「まるで生きた心地がしない。これならいっそ死んだほうがましだったかもしれない。」
一人の少年が呟く。
「嘆いたって仕方ないよ。あと1週間もすれば、街中のほぼ全員が住めるだけの建物が用意できるんだって。それまでの辛抱だよ。」
少年の姉が言う。
「それまで、野宿しろっていうのかよ!」
「・・・。」
1週間で避難した人々全員が暮らすことのできるだけの、建物は用意された。しかし、街がひとつ消えたこの事件は、人々に深い傷を負わせることになった。
――――――
「ハックショイッ!!!!」
あ、なんだろう。なんかものすごい奇妙な夢を見ていたような・・・。
「ま、いっか。そういえば、イイダと遊ぶ約束してたんだったな。急いで用意しないと。」
朝、謎の夢にうなされて起きたハナオ。重度の花粉症の彼は今日もくしゃみが止まらない生活を送っていた。
周りから時々「鼻水マン」と呼ばれてからかわれているが、そんなことを気には止めていないようだった。
今日も平和な一日になりそうだ。
完
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