9月5日の悲劇

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学生たちが胸躍る夏休みが過ぎて、カレンダーがめくられて5日過ぎた日。 結婚を理由に急に辞めていった子の補充で、私が働くレンタルショップに新しいスタッフが入ることになった。 「じゃあ、小林くん。自己紹介して」 新垣(アラガキ)店長がそう振ると、人良さそうな笑みを浮かべて長身の男の子が深く頭を下げる。 「小林誠一郎(コバヤシ セイイチロウ)と言います!映画より音楽の方が好きです。これからよろしくお願いします!」 「じゃあ、…ええと…冴木さん。今日から、小林くんの教育係やってね。一番長いし、仕事出来るし、冴木さんなら僕も安心して任せられるから」 「わ、私……ですか?!」 いきなり話を振られて私は上擦った声をあげた。 新しい人が来る事は知ってたけど、男の人だし、誰か男性が担当するのかと思ってた。いつもだったら社員の三枝(サエグサ)さんが引き受けてるのに、今日に限って知らんぷりを決め込んでPCをいじっていた。 慣れない人と話すの嫌いなの知ってるくせに。 あとで、文句言ってやる! スルーする背中を恨みがましく睨んでいると、小林くんは一歩前に歩み出て私と目線を合わせ、人良さそうな顔を更に崩して笑いかけた。
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