白き世界にて

1/9
200人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

白き世界にて

吹雪。 そのゴウゴウたる風に舞う雪。 視界を隠し、辺りを真っ白に染め上げる。 ホワイトアウトと言う現象である。 それは、今に始まった事ではない。 言い伝えでは、過去には吹雪のない世界が広がっていたという。 太陽なる物が空から光を降り注いていたそうだ。 何年前になるのであろう。 巨大な隕石が地球を襲ったのは… それにより噴火した火山。 巻き上げられた土砂。 それらは地球を覆う。 そして訪れた冬。 永遠の季節である。 人は、それを氷河期と呼ぶ。 永遠の冬の季節が到来したのだ。 人々は、地下へ都市を建設して生き延びた。 西暦25XX年。 既に宇宙への進出を果たし、新たなエネルギーを得ていた人類。 隕石などは惑星外で処分できる筈であった。 それが、人為的でなければ… 星間独立戦争。 忌々しい名である。 ヤツらは、地球から独立するだけではなく、置き土産を幾つか置いていく。 それが隕石であり、終わらぬ冬である。 そして、衛星監視装置。 衛星軌道近くまで飛来する物を打ち落とす、悪魔の申し子だ。 それにより地球の民は、地球と言う牢獄へ閉じ込められてしまう。 さらに、地上戦にて放たれた様々なクリチャー。 獣牙竜達である。 分厚い毛皮と厚い脂肪に覆われたドラゴン。 そう表現すれば良いのだろうか。 無論、こんな生き物が爬虫類である筈もない。 バイオテクノロジーで造りだされた化け物だ。 地表はヤツらが闊歩する危険地帯。 故に地下なのだ。 そんな獣牙竜。 物資の乏しい俺達にとっては、最大の補給物資となっている。 蓄えた油はエネルギーに。 また、体内には餌を砕くのに飲み込んだのか、大量の鉱石が… 毛皮、骨、肉にいたるまで、俺達にはなくてはならない物となっている。 だが… ヤツらを狩るのは至難の業。 無論、装備なしの人間など、一溜まりもない。 そこで使用されるのがグラヅなのである。 昔風に言えばパワードスーツと呼ばれる物になるであろうか… ただ、獣牙竜の素材を使用することにより、頑健なのに柔軟な物となっている。 また耐寒性に優れているのは当たり前だ。 無論、メカによるパワーアシストに体温調整機能も完備だ。 飲食や排泄も、グラヅ内で行う。 地表で行うなど、自殺行為だ。 氷点下の世界で長時間の移動。 しかも、危険生物と戦うのだ。 暖かい食事は、ホームに帰ってからだ。 『ザー  ガーピーッ  チー』 (っ!  また、オンボロがっ!)
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!