帽子の少年

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身体中が痛い、ゆっくり目を開く。どうやら流されているときにあちこちぶつけたようだ。 あれだけの勢いのある水に巻き込まれたというのに不幸中の幸いか。最初にいた場所からそんなに移動してないし、あの俺を閉じ込めていた忌々しい“箱”は見えるところにある。 俺は片手で口元を押さえたまま、機械に近づいた。水分を吸い込んで重くなった服と、足元に溜まっている海水のせいでかなり歩きにくい。 『詳細は右のボタンを……』 相変わらずにうるさいな、何度聞いても、この無機質な声は、耳につく。 「えーと、右のボタン……あった。」 機械のボタンを押してみる――が、なんの変化もない。 「あれ??」 再度、押して見たが、 『システムに異常が見られます……システムに異常が見られます……』 こいつは、馬鹿の一つ覚えみたいに同じ言葉を繰り返している。
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