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「……櫻井、迎えの委員とは会わなかったか?」 「え、あ……は、はい、会ってませんけど」 授業が終わり放送で呼び出された椿は、目の前の人物とその周りの様子に戸惑いながら言葉を返した。 風紀に呼び出されるのは予想していた範囲内だったが、さすがにこの状況は予想していなかったと、内心パニックになっている。 「そうか。で、この二人は?」 「あ、えっと……その、付き添い…です?」 疑問に疑問形で返してしまった。 二人というのは、椿が呼び出されて風紀室へ向かおうとしたら勝手に着いて来た者達。恭二と正哉だ。 二人は警戒するように朔弥を睨み付けている。 というのも、朔弥の膝の上には意識を失っている流が居た。まぁ、実際にはただ寝ているだけなのだが。 食堂に戻ると言って出て行ったはずの流が何故、風紀室で風紀委員長の膝の上で意識を失っているのか。 何も知らない恭二と正哉が警戒するのは当然といえば当然だった。 「まぁ、呼び出した理由は大方予想してる通りだ。詳しい状況の説明を頼む」 「あ、はい。実は――」 椿は今日だけで何度もしたあの時の状況を説明した。 朔弥は利き手でメモを取りながら、反対の手では流の髪をいじっている。 「つまり、あの馬鹿がちょっかい出して殴られたってことでいいのか?」 「えっと、あの馬鹿…というのが生徒会長であるなら、そうです」 「……そうか」 朔弥は遠い目をしてこれから起こるであろう問題を考えた。 ただでさえ、数人の対象がすでに転入生に入れ込んでいるのだ。間違いなく、親衛隊は動くだろう。 それでなくとも、一番規模の大きな親衛隊を持つ生徒会長が殴られたのだ。 制裁はいつ始まってもおかしくない。 「手を出しちまったのがなぁ……」 「……天野来くん、ですか?」 「あぁ、手さえ出さなきゃ騒ぎの元凶として罰するのはあの馬鹿だけですんだんだよ。ただ、手を出しちまったら謹慎処分は免れないな」 服装等の校則は緩いが、暴行等に関しては厳しく取り締まることになっている。 流や不良達も本来であれば取り締まる対象であってもおかしくないのだが、彼らは一種のコミュニケーションのようなものとして見ることにしていた。 流がいる限り不良達は他の生徒に絡むことはないと朔弥は思っているので、しばらくは様子を見ると判断したのだ。 勿論、やり過ぎれば処罰の対象になるのだが。
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