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複数の男達に囲まれている青年。 その場に漂う雰囲気は、とてもいいと言えるものではない。 青年は、男達に目をやる。顔を歪めた。 それを見た男達数名は、何を思ったのか青年に殴りかかる。 人数は合計八人。全員体格がいい。 そんな人数相手に、青年一人がどうにか出来るのか。 何も知らない人であったなら、疑問に思っただろう。 「園竜寺、さすがにこの人数相手は勝てねぇだろ?チャンスをやるよ、土下座して許しを請うならなぁ」 ぎゃははと下品に笑う男達。 そんな男達を見つつ、飛んでくる拳を避ける。 殴りかかってくる男達を見ずに、だ。 その違和感に気付く者は、この場にはいない。 「っち、避けんじゃねーよ」 攻撃を仕掛けている男が言う。 その瞬間、空気が変わる。 拳を避け続けていた青年が、立ち止まる。 避ける気配を見せずに、ただ男達を見据えて静止した。 チャンスとばかりに、男達が一斉に青年を襲った。 「っ、がはっ」 鈍い打撃音と、呻き声が響く。 拳が鳩尾に埋まる。足が腹にめり込む。 殴りかかってくる拳を止め、顔を殴り付ける。 血に染まるアスファルト。 全てが終わるまでの時間は、長いようで短く感じられた。 全ての音が止み、静寂が辺りを支配する。 「………」 その場で両足の裏を地に付けているのは一人だけ。 山積みになっている男達を見つめている青年。 その一人だけだった。 長い間男達を見つめていたが、チャイムが鳴り響いた瞬間、青年はそこには居なかった。
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