2212人が本棚に入れています
本棚に追加
「は、屋上にまた不良の山積みだぁ?」
室内に響く怒鳴り声。
机に向かって仕事をしていた生徒が、驚きに肩を震わせた。
声の発生源は彼らの長、風紀委員長の水無月 朔弥である。
「どーせまた園竜寺に喧嘩売った馬鹿共だろうが。ほっとけ、んなもん」
呆れの色を含ませ、朔弥は手にしている携帯に告げる。
内容は、屋上での乱闘後の処理について。
山積みにされていたらしい男達の名前を聞いたのは、朔弥は三度目だった。
そしてどれも園竜寺 流関係。
喧嘩を売って、ボロ負けをしたというなんとも自業自得な内容だった。
「しっかし、園竜寺も大変っすねぇ。毎度毎度、知りもしない相手に喧嘩売られて」
「いい噂は聞かないが、園竜寺単体での事件は無い。それが答えだろ」
不良は厄介な人間達の集団として認識している朔弥だが、流に関しては別だった。
勘違いしている者もいるが、流自身は事件を起こしてはいないのだ。
大半が、売られた喧嘩を買ったにすぎない。
そのことに関して、朔弥は流が不憫だと思わずにはいられなかった。
「でも、園竜寺くん教室に来ないんですよね」
「普通行きづらいだろうが。好きで来ないわけじゃ無いんじゃねーの?早乙女、同じクラスなら少しはフォローしてやれ」
「う、でも会話が続かないんですよ。園竜寺くん睨んでくるし」
早乙女と呼ばれた青年、早乙女 悠が背中を丸める。
情けないように見えるかもしれないが、彼は普通の不良相手なら問題ない。
なぜ流に対しては弱気なのか。原因は二人の出会いにあった。
最初のコメントを投稿しよう!