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それは高等部に入学してから一週間経った日のこと。 中等部でも風紀委員をしていた悠は、高等部でも入学早々から風紀委員として活動していた。 授業中の校内の見回りをして屋上に着いた時だ。 扉を開いてサボっている生徒が居ないか探すと、堂々と眠っている人物が居た。 それが流である。 この時すでに流の様々な噂が飛び交っており、流が普段教室に居ないことから、悠はその噂を信じつつあった。 少し戸惑ったが、サボりはサボり。指導の対象である。 悠は流に声を掛けた。 「園竜寺くん、起きて」 その瞬間、右頬の辺りを風が吹く。 目をやると拳がある。誰のものかは分かり切っている。 目線を少し下ろせば、自分を睨み付ける鋭い瞳があった。 「何時だ」 「っへ?」 「時間」 横にあった拳が下げられると同時に、問い掛けられる。 突然の問い掛けに反応出来ずにいると、再び声を掛けられた。 その言葉で、時間を知りたいのだと理解すると、悠は答えた。 「三時間目だけど」 「っ!───」 現在時刻を知った流は何かを呟き、あろうことか屋上から飛び降りた。 悠には流の呟きは聞こえなかったが、トラウマが残された。 屋上から飛び降りるという人間離れした行動が衝撃すぎたのだ。 これが、悠が流に対して弱気な理由に全てである。
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