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一方、流はというと、校舎裏に居た。
本来ならば授業に出なくてはいけないのだが、流には関係のないこと。
「なぁなぁ!お前なんて名前なんだよっ」
そして、現在進行形で絡まれている。
もっさりとした頭に、黒縁眼鏡。顔が全く見えなくなっているが、根暗というわけではないようだ。
だが、とても耳障りな騒音並の声が響く。
これならまだ、根暗な方が好感は持てた。
「おい!聞いてるのか!?」
「………」
五月蝿い。この一言に尽きる。
生憎と、流は意味もなく騒がしいモノが嫌いだった。
それには、目の前のもっさりも含まれる。
流は無視することを決めたのか、一言も話さない。
それがもっさりの逆鱗に触れるのだが、流は一切気にしなかった。
「俺の言うことには答えないといけないんだぞ!」
とんだ自己中である。
ここまで自分中心だと、もはや呆れるしかない。
流は呆れた目をもっさりに向け、その場を離れようと歩み出した。
背を向けて、三歩目を踏み出した時だ。
流は左に重心を掛け、そのまま転がった。
元居た場所の鳩尾辺りには、もっさりの拳があった。
「──何の真似だ」
「っ、何で避けるんだよ!」
低い声が告げた瞬間に、理不尽な叫び声が辺りに響く。
何で避けるのかもなにも、普通は避ける。あくまでも、気付いたらの話だが。
流の動きは慣れている者の動きだが、なぜもっさりの動きが分かったのか。
この状況を見ていた者が居たならば、疑問に思っただろう。
だが、見ていた者は誰一人居ない。
授業中の校舎裏は、人が全く来ないサボリの定番地でもあるのだ。
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