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「っ、あ、あの!」 「ん?なんだ」 「そ、その……流くんは、どうしたんですか?」 食堂に戻ったはずの流が、なぜ意識のない状態でここに居たのか。 彼は強いはずだ。少なくとも、風紀委員長である朔弥とタイマンで渡り合える程には確実に。 ただ、それはあくまでも噂での話。 椿達は実際に流の実力を見たわけではなく、噂を聞いていただけだ。 どこまでが真実であり、どこからが噂に過ぎないのか。その判断はまだ出来ない。 「疲れてるんだろう。心配しなくても寝てるだけだ」 「……先輩、園竜寺は食堂に向かっていたはずなんですが」 「あぁ、だからあんなとこ歩いてたのか」 探るような目で正哉が尋ねるが、朔弥は気にする様子もなくただ納得するだけ。 暗に何をしたのかというメッセージも含まれているのだが、それに触れようとしない。 朔弥がそういった含みのあるものに対し鈍いのではない。 あえて、無視しているのだ。 「まどろっこしいのはやめだ。コイツに何したんだ、風紀委員長サマ?」 「恭二、喧嘩しに来たわけじゃないんだ。それに、お前のあからさまな挑発に乗るのはお前と同じくらいの馬鹿だけだ」 今にも飛び掛ろうとする勢いの恭二を諌めながら、正哉は朔弥の動向を探る。 というのも、正哉と恭二は学園のトップを信頼していない。言わずもがな、勝関連である。 この対応を見ていれば正気なのだろうが、警戒するに越したことはないのだ。 「二人とも、委員長さんに失礼だよ。……すみません」 「……ははっ、別に気にしなくていいぞ、不良共なんかもっとすげーからな」 二人の態度を注意して、椿は頭を下げる。 そんな椿を見て少し驚いたものの、朔弥はすぐに笑いながら頭を上げさせた。 面白い三人だと思いながら三人のやり取りを眺めていると、ふと膝の上で何かが動く。 そこに目をやれば、赤い瞳がこちらを見つめていた。 「起きたか?」 「……え?」 赤い瞳に見つめられながら声を掛けると、意味が分からないと言うように首を傾げられる。 勿論、流は本当に意味が分からない。 目を覚ませば見知らぬ男の膝の上で寝ていて、周りを見れば見覚えのある三人が何やら話しているのだ。 寝起きの頭では到底理解は出来なかった。
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