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「いいかい!死んでしまった人間界の生き物の魂を導くというこの仕事は、君が思っている以上に重要でっ、必要でっ、大切な仕事なんだ!」
ベインは呆然としながらアフリマンを眺める。そのアフリマンがベインに寄るとその顔を覗き込むようにさらに近づく。
顔が、近い。そして、怖い。
ベインは顔を引きつらせ、体を後ろにそらせる。
「それを知っても、君はこの仕事をやる覚悟があるかい?」
ベインはごくりとつばをのみこみ、覚悟を決め、
「あります!」
ゴッ
返事をすると同時にのけぞらせていた体を戻したため、アフリマンと頭をぶつけた。
「す、すみません」
痛みで謝罪の言葉が震えてしまう。
「いいんだよ。その意気が必要だ」
すかさず現れた秘書にシップを張ってもらいながら、アフリマンが笑顔でそう言ってくれる。
だが、その目は笑っておらず、しかもその口調が冷ややかなのに、もちろんベインは気づかない。
アフリマンは椅子に座り直し、さっきの熱のこもった言葉から一転して、冷静に仕事の話を始める。
「実は二日後、人間界で多くの死者が出る。一人残らず導くために人手が必要なんだ。君にはそこに行ってもらう」
「はい!」
ベインはうれしさのあまり涙ぐむ。
「詳しい内容の書いてあるノートと必要なものは、このあとで秘書が渡す。報酬はきちんと仕事が終わってから決めるが、成功すれば千ケロンにはなるだろう」
「あ、あ、ありがとうございます!」
ベインはアフリマンの手を強く握り、大きく振った。
「さぁ、時間がない。がんばってきてくれ」
「はい!」
「それではこちらへ」
秘書の言葉にベインはアフリマンに頭を下げ、秘書について別の部屋に向かった。
社長室の扉が閉まると同時に、嫌な、気味の悪い笑い声が部屋に響く。
「ま~たバカが引っかかった。そんな大切な仕事をアルバイトに任せるわけがないことぐらいわかるだろうに」
アフリマンはいったん静まり、社長室の扉をじっと見る。アフリマンの目には元気に部屋を出て行ったベインの残像が見えている。
「だけど、バカは好きだぜ。せいぜい俺たちのために働いてくれよ」
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