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…しばらく考え込むようにしていた彼は、ふいにわたしの目の前にあったソファに座った。
「本当に紅茶はいらないのですね?長い話になります。ご覚悟はおありで?あなたがいくら読書好きでも、少し疲れてしまうかもしれませんよ」
「…?なんでわたしが本好きなこと知っているの?さっきも、走るの久しぶりって知ってたし…まるで」
わたしをずっと見てきたような口ぶり。
冬真はずっとわたしが入ってきたときから、背筋を伸ばしてキレイな姿勢でいた。
でも、わたしがその言葉を口にした瞬間に、がっくりと肩を落とした。
突然のことに目を丸くしていると、彼は言う。
「実に鋭いお嬢さんだ…失敗したかな、久しぶりに。最近の人間はだいぶ退化が進んでいるから、大丈夫だと思ったんですけどね」
「え?いったい、どういうこと?何言ってるの?」
ちょっと、頭が痛くなってきたじゃん。
冬真はため息を一つついて、不気味ともとれる笑い声を漏らす。
「わたしが生まれたのは…」
そうして、彼は語り始めたのだった。
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