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その怪物は、金色に光輝いていた。
この薄暗い街では目立つことこの上ない、異様な風体だ。
文学少女は、その怪物を知っていた。
どこで見たのかはわからない。でも、知っていた。
走りながらもちらりと振り返って、何回も何回も、繰り返し繰り返し首をかしげているのは、そのせいだ。
少女にはたぐいまれなる才があった。
一度読んだ本のことを忘れたことがないのだ。
現実にいるはずがないのに、金色の怪物を忘れているのはおかしなこと。
少女にとって、あり得ないことだった。
怪物は泣き叫びながら彼女を追いかけ続ける。
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