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わたしの手をつかんだのは、同じぐらいの年代の男子だった。
名前を聞くと、冬真と名乗った。
学校でよく見かけるような、乱暴な言葉づかいで卑猥な単語が好きなどの特徴は見当たらない。
なぜか同年代のはずなのに、わたしにも敬語を使う。
いつもだったら、変な男子がふざけているなー、とか思うのに全然そんな印象はない。
きっとそれは、この不思議な少年が自然体だからだろう。
「…どうしました?ぼうっとしていらっしゃるようですが」
「あ、ごめん。…えっと、そうだ!怪物!外に怪物がいるよ!鍵閉めないと…あの」
あの金色を思い出して、わたしは慌てていった。
が、扉を振り返り、首をかしげる。
そう、なぜか執拗にわたしを追いかけまわしていた怪物は、鍵を閉めていないはずなのにこの中へ入ってこない。
眉をよせてまた黙りこくったわたしに、冬真は笑顔になった。
「お嬢さん、心配はありませんよ。この洋館は特別仕様なのです」
「特別仕様?」
「はい。…説明はいたしますが、どうせなら玄関などではなく、居間へと参りましょう。久しぶりに走って、疲れたでしょう?」
最後だけ悪戯を仕掛けた小僧のような口調だった。
「なぜ知ってるの?走るのが久しぶりだってこと」
疑う口調になった。
冬真はただ笑って、その質問には答えなかった。
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