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「驚くことはない。人違いなのは想定外だったが、この俺の一撃をくらって生きている者などそうそういないさ」
そう言って含み笑いを浮かべるソレを彼は唖然と見上げていた。
ソレが何を言っていうのか理解してはいなかった。
突然お前は死んでいる――だとか。
人違いなのは想定外――だとか。
入ってきた言葉の断片は掬われることなく流れていく。
「それでだ坊主。めんどくさいことこの上ないが、償いとやらをしてやろう。ほら聞いているのか」
ビシッ、ビシッ――とソレは頬を弾く。
ソレが頬を弾く度に、鈍器に殴られたような鈍い痛みが彼の頭部を襲う。
「痛っ、痛いからやめろ!」
そう言うとソレはそうかと呟き弾くのを止め冷笑する。
彼は落ち着いて目を凝らすと、頬を弾いていたのは鈍器ではなくソレの小指である事に気付く。
そして同時に、彼は初めて認識をする。
ソレは彩斗よりも巨大で、強大で、自分とは格が違うことを。
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