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そして彼は黙り込んだ――蛇に睨まれたカエルさながらに。
「それでは本題に入ろうか。償いとしてお前の願いを叶えてやる。心して考え、答えろ。お前の最期の願いになるのだからな」
最期、という言葉に反応して肩が跳ねあがる。
そして考え込んで問いを投げる。
「なぁ、俺を生き返らせるってのは無理か?」
ソレはかぶりを振って即答する。
「無理だな。それは俺の力で為せることではない」
「……複数の願いを叶えてもらうことは出来るか?」
「それは可能だ。基本的に俺の匙加減一つで決められる範囲だからな」
なるほど――と小さく呟き再び考え込む。
例え複数叶えることが出来たとして、一体何をかなえようと言うのだろうか、と彼は自身に問いただす。
そもそもこの場において叶えたい願いなど持ち合わせていない。
幸せを祈るべき家族は、彼を残し先に逝ってしまっている。
友人はいるが、人生を賭けてまで祈るほど深い仲の友人はいない。
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