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密かに復讐の案を考えるも、その考えはソレの行動によって中断せざる得なかった。
大きな拳を開いたソレは、真黒な陽炎の一部を球状に束ねて圧縮させる。
殺される。彼はそう直感した。
彼は既に殺されてこそいるのだが、ソレが構え、彼に向けている真黒な陽炎は人間の原始的な恐怖を呼び起こすほど圧倒的で、暴力的なものであった。
そしてその球体は、ソレの短い掛け声と共に彼に向けて飛ばされ、彼は身動きもせずに目を見開く。
避けるという選択肢は、彼にはなかった。
逃げるという選択肢は、彼には存在しなかった。
彩斗はただ恐怖を抱きながら、なす術もなくその球体を見上げることしかできなかった。
そして彼の視界が黒で染まった。
黒が飲み込む。
全てを焼きつくし、破壊する。
彼の魂を、その在り方を、そしてその性質を。
そしてそれを見届けるソレは、彼に声を掛ける。
「人で在りながら、人外になれるとでも思ったのか。もしそのような甘えを持っていたのなら残念だったな」
燃えゆく彼を見据えながら、彼は更に言葉を続ける。
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