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『あげは、起きてっ!あげは!!』
楓の切羽詰まった声に慌てて飛び起きた。
『早く!!荷物はもうまとめてあるから、早く逃げるの!!』
…何事…?!
…パチパチパチッ…ボッ…ガランッ…
疑問に思った途端、微妙な距離から異様な音と闇の中に揺らめく灯りに、不安と焦りが押し寄せる。
「…か…じ…?!」
『早く!!!』
素早く肩にかけられた打掛は真っ黒なものに見えた。
『…こんなに早いなんて…だけど…』
何やら呟き始めた楓。
「…父上達を助けなきゃ…」
父上達の館へ向かおうと立ち上がりかけた途端、強く肩を押さえつけられた。
『…お館様達も父上も…助からない…』
瞳に涙をいっぱいに溜めながら、首を横に振る楓。
「…ど…して…?
…やだぁっ!父上達を助けるっ!!楓、離してっ!!」
どんなに喚いても、楓は肩に置いた手を離そうとはしなかった。
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