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― スパンッ ―
襖が勢いよく開き、闇夜に見えたのは揺らめくように輝く三日月だった。
『あげは、楓、無事かっ?!』
『はいっ、政宗様無事です!!』
急に抱き上げられ身動きができないほど強く抱き締められる。
『…良かった…そなただけでも無事に助け出すからな…』
耳元で囁かれる声は甘くかすれるような心地よい声…。
三日月がついた漆黒の甲冑に身を包んだ政宗様だった。
「やっ、父上達を助けるのっ!政宗様、離してっ!」
力強い腕の中から抜け出そうと精一杯身をよじる。
『あげは、お願いだから言うことを聞いてくれ!…もう…紅龍様達は…』
『政宗様、お急ぎを!!』
政宗様の後ろから小十郎の声が響く。
楓はいつの間にか現れた小十郎に手をとられ、すでに廊下へ出ていた。
『…しかし、どこか逃道を探さねば…』
『大丈夫です。この先に塀が壊れたままになってます…丘の上へ抜けられますっ。』
『よしっ、ここから出るぞ!』
私を抱えたまま楓と小十郎の後を走り出す政宗様。
「いやっ!父上、母上、桜の方、皆!!」
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