一章 やんでれ?

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 それはシェリア・バリストレイ・アルファルの何気無い一言から始まった。 『もしかしてさ、アンタってヤンデレなんじゃないの?』  ガレーディア公国首都リザリアに甚大な被害をもたらした螺旋事件が本当の意味で終結し、アベルが学生寮に戻り、ユンフェミア皇女殿下の護衛任務に復帰した次の日の事である。  半ば義務的なシェリアとの会話。  リザリアでの復興作業、治安活動、防衛体制、公国政府との連携、ギルドの人員補充。やるべき事は山ほどある。  その作業を円滑に進めるためにも、シェリアとシェリーの遠距離でも会話できる能力が非常に役立っていた。  今日もシェリアのいる本部に様々な事柄を伝え終わった後、姉が何やら聞き慣れない単語を言い放った。 『……はい?』 『うーん、姉としてはそういう方向に進んでほしくないんだけどねぇ。けど、アンタならなりかねないのよ、ヤンデレに』 『姉様、その……“やんでれ”とは何ですか?』 『――なるほどねぇ。そういう天然要素もアベルを落とすのに一役買ったのか。ふむふむ、勉強になるわ』  カリカリとした音が聞こえる。何かをメモしているようだ。内容までは解らないけれど。  ――いや、やんでれとは本当に何なのだ? 『……まぁ、簡単に言うなら、その男の人の事を超超超好きで、熱に浮かされたぐらいデレデレしちゃう女の子のことよ』  なるほど、と納得し、 『なら、私はそのやんでれというものですね』
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