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私のことをひとりの人として、存在している人として、生きている人間として、見つめてくれた人は今までいたのでしょうか。
私は私だと……
求めていたような感情が、そこに存在している気がしました。
求めているものがその感情だと判断出来た私は、すでにこの感情を知っていたのですが、このときはそれに気が付きませんでした。
もう、記憶の奥底に沈んでしまっていて、浮かび上がってくることはない出来事が、過去にあったのですが、その事実を忘れ去っていました。
結月さんの顔を見ます。
綺麗な目。
静寂の中、澄み渡った水面のように、却って私の胸を騒つかせます。
そんな元来の瞳の静けさとは反対に、結月さんは頬を赤らめ、子どものように可愛らしい顔をして私を見ています。
「私も、結月さんと仲良くしたいな……」
結月さんはきっと、私の抱えているもの──私を解っているのではないかと、微かな夢を見ました。
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