2

2/7

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 服部の自宅は、成程、確かに山の麓だった。  何故、こんな辺鄙な所にアパートを建てる気になったのだろうと首を傾げたくなるほど、あたりは真っ暗だ。  車から降りてあたりを見回し、武市はアパートの裏の鬱蒼とした木々に……といっても、暗い中ではその木々の奥行までは分からず、手前にこんもりと飛び出しそうになっている木々の圧迫感に……冬の大行軍野営を思い出した。  去年の冬。あまり体力がなかった一三四(にない)善司や遠藤真帆といった生徒達が本軍に遅れをとり、副担任である武市が彼らに付き添っていた。    だが、こともあろうに武市自身が道に迷ってしまい夜が近づき、逆に一三四と遠藤真帆の力を借りて本軍と合流出来たのは色々と苦い思い出だ。  ちょうどその日は晴天で、開けた場所に出た時には一三四は星を見て方角を教えてくれたし、遠藤真帆は武市が持っていた端末で本軍の場所を探り当ててくれた。  ようやく本軍と合流出来た後、担任の後藤先生からこってり絞られた。コンパスや地図やパソコン、無線機などそういったものが入ったリュックを生徒の遠藤長太郎に預けたまま本軍と離れたことを、当たり前だがしつこく怒られた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加