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「タヌキ出るんですか、ここ?」
「たまに、出てくるぞ。あいつら、夜行性だしな。目ぇ光らせてこっち見てる」
笑いながら服部は胸ポケットから鍵を取り出し、ドアを開けた。
「狭い我が家だけどな。上がれよ」
玄関の明かりをつけてから靴を脱ぎ中に入った服部は、武市にも中に入るよう促した。
「服部先生んちって初めてだなあ。お邪魔します」
いそいそと靴を脱ぎ、揃える。
玄関に置かれたシューズボックスに、綺麗に磨かれた軍靴が入っているのが見える。
休日になるとワックスや布を使って、ピカピカに磨き上げているに違いない。
玄関を入るとすぐに階段になっていて、階段を上り、引き戸を開けるとそこがリビングだった。
想像していた通り、服部の自宅の中は見事に片付いていた。
2LDKらしい部屋だったが、乱れている気配がない。所定の位置に物がきちっと収まっているのだろう。
ただひとつの例外は、リビングに置かれたテーブルの上や床に無造作に積み上げられた教材や資料。授業で教えるためのものだろう。
「適当に座っててくれ」
顎でテーブルを指して武市に座るよう声をかけると、服部は積み上げられた教材や資料を手早くまとめ、奥の部屋に消えていった。
武市はキッチンの反対側に座り、少しそわそわしながら部屋を見回す。
暗かったので外観からはよく分からなかったが、建ってまだそんなに経っていないのではないかと思うような、新しめの内装だった。
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