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武市が泡を軽くすすった一方、服部はぐびっと一気に三口ほどいったらしい。喉仏が大きく三度、上下するのが見えた。
ふう、と一息つくと、大柄な見かけによらない綺麗な箸の持ち方で、服部はトレイから豚肉をつまむと鍋で軽く泳がせた。
「そういえばおまえって、教員免許持ってるんだよな?」
「何ですか、藪から棒に」
「いや、大学時代って聞いて。そういえばおまえ、ちゃんとした教員免許持ってたよなーと思ってな」
「教育実習もしましたよ。ちゃんとしたやつって、服部先生だって教職検定受けてちゃんとしたやつ持ってるじゃないですか」
「おれたちのは、自衛法を教えるための特別免許だからな。教員免許じゃないから、防衛学院以外じゃ使い道がない。おまえの持ってるやつは、ちゃんとしたやつだろ? 何の教科なんだ?」
服部の顔がもうほんのり赤くなっていた。と言っても日焼けしているため、赤黒く、という表現のほうが適切かもしれなかったが。
「中学の、社会科、です。もうほとんど内容忘れちゃいましたけど」
それだけ言って、ちびりとビールを口に含む。
あまりその話題に触れたくなかった。もし仮に東防学院を辞めることがあっても、自分だけは他に行く所があるような、何だか後ろめたい気持ちになるからだ。
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