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「なのになんで、教師にならねえで自衛隊なんか入ったんだ?」 「本当は、大学卒業したら教師になるつもりだったんです……。教員の空きがなくて。しばらくは塾講師でもして収入得ようかな、とも考えたんですけど、思うところがあって」 「ふん?」 肉をポン酢タレに絡ませて口に含むと、服部は相槌を打って続きを促した。  武市は軽く溜息をつくと話を続ける。 「……俺の同期に、やっぱ教員目指してるヤツがいたんですけど。そいつ、すげえいい加減なヤツで、そのくせ要領は良くて、まあ、世の中渡り歩くのは上手いヤツだったんですけど、そいつに教わる生徒がかわいそうなくらい責任感ないヤツで。  そいつは教職決まったんですよ、コネで」 「ふん。それから?」  服部は相槌を打ちながら、今度は鍋の中にあるレタスや豆腐や浮かんでいる肉を、武市のごまタレの器に入れていく。 「あ、すいません。  で、なんか、納得いかなくて。畜生、と思ってたら、自衛隊募集の広告見て。気付いてたら応募してたんです」 「……何に取り憑かれてたんだよ、おまえ。確か、陸上の普通科だったよな?」 「はい。任期満了して辞めたんですけど。なんで、最下層の陸士長止まりです。本当、何に取り憑かれてたんですかねえ」 自分でも不思議だった。納得いかなくて、腹が立って、何故に自衛隊だったのか。 「服部先生も、大学卒業して自衛隊でしたっけ?」 「ああ。俺も陸士長止まり」 少し自嘲気味に笑うと、服部は再びビールに口をつけた。
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